店舗内装設計とは?設計内容・図面・進め方を店舗設計デザイナーが解説
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「店舗内装設計」と「内装デザイン」の違いが分からず、どこまで何を依頼すればよいのか悩んでいませんか。本記事では、店舗内装設計の役割や決めるべきこと、図面の種類や設計を進める手順、よくある失敗ポイント、そして依頼先の選び方まで、詳しく解説しています。
この記事でわかること
・店舗内装設計とデザイン、レイアウトの違い
・設計で決める内容と作成する図面
・業種別の設計ポイントと進め方
・失敗しやすいポイントと依頼先選びの基準
読み終える頃には、店舗内装設計の全体像や正しい進め方がよくわかり、開業準備を安心して進められるようになるでしょう。物件契約や見積もりで悩んでいる方も、ぜひ最後までご覧ください。

株式会社Lovation
山田 真吾(やまだ しんご)
店舗デザイナー
資格 : 照明士 / 商業施設士 / 色彩検定/マーケティング検定
これまでに手がけた店舗数は 180以上。 美容室、飲食店、カフェ、物販、フィットネス系、サロン系など、あらゆる業態において店舗デザインの実績があります。地域は北海道から沖縄まで日本全国で「多くの人から愛され、永く続くお店づくり」をサポートしています。
店舗内装設計とは?

店舗を開業する際、「内装デザイン」と「内装設計」の違いが分からず、何をどの段階で決めればよいのか迷う方は少なくありません。まずは店舗内装設計という言葉が指す範囲を明確にしていきます。
店舗を「工事できる状態」にする設計
店舗内装設計とは、店舗のコンセプトやレイアウト、内装デザインのイメージを、寸法や設備、法律上の決まりごと、また施工条件まで考えて具体的に形にする仕事です。「こういう雰囲気にしたい」というイメージをただカタチにするだけでなく、施工会社が正確に見積もりを作成し、実際に工事できるような資料にまとめることも、店舗内装設計の大切な役割となります。
デザインイメージがどれだけ魅力的でも、電気容量が足りなかったり、排水勾配が確保できなかったりすれば、その通りに工事することはできません。店舗内装設計は、理想と現実の条件をすり合わせ、実現可能な形として図面に落とし込む工程だといえます。
店舗内装設計が必要になる理由
住宅の内装と比べて、店舗の内装は考慮すべき条件が多くなります。店舗内装設計が必要になる主な理由は次の通りです。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 設備条件が複雑 | 住宅と比べて電気・給排水・換気などの容量が大きく、業務用機器への対応も必要 |
| 業種による違い | 飲食店、美容室、サロン、物販店など、業種ごとに必要な設備や動線が異なる |
| 物件条件の制約 | 建物の構造や既存設備によって、実現できる内容が変わる |
| 追加費用の防止 | 設計が不足したまま工事を進めると、後から仕様変更や追加費用が発生しやすい |
| 許可・届出への対応 | 営業許可や消防設備など、法規や行政手続きへの対応が求められる |
このように、店舗は「見た目を整える」だけでなく、営業を成立させるための条件を一つずつ確認しながら形にしていく必要があるため、専門的な設計が欠かせません。
「内装設計」と「店舗内装設計」の違い
内装設計は、住宅・オフィス・店舗など、建物内部の空間を設計する広い概念です。その中でも店舗内装設計は、営業内容、顧客動線、スタッフ動線、設備容量、法規、営業許可など、店舗特有の条件に対応する設計を指します。
同じ「内装を設計する」という行為であっても、店舗の場合は不特定多数のお客様を迎え入れ、日々の営業を継続することが前提になります。そのため、住宅の内装設計とは異なる視点、たとえば客席の回転率や厨房の作業効率、保健所や消防の基準への適合といった要素まで踏まえて設計を進める必要があります。
内装設計そのものの基本的な考え方や進め方について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
店舗内装設計は、店舗内装をつくる工程の一部です。物件選び、費用、レイアウト、デザイン、工事まで含めて、店舗内装の全体像を整理したい方は、以下の記事も参考にしてください。自分の理想像をどのような手順で形にしていけるのか、全体像を把握しておくと、この後の内容も理解しやすくなります。
寸法や設備、法規といった専門的な条件を自分だけで整理するのは簡単ではありません。理想の店舗像をどう実現すればよいか具体的に分からない場合は、ロベイションのような店舗設計の専門会社に相談することも検討するとよいでしょう。
店舗レイアウト・内装デザイン・内装設計の違い

店舗づくりを進めていくと、「店舗レイアウト」「内装デザイン」「内装設計」という似た言葉が次々に登場し、何がどう違うのか分からなくなる方が多くいらっしゃいます。これらは同じ工程を指しているわけではなく、それぞれ役割が異なる別の工程です。この違いを理解しないまま打ち合わせを進めると、「配置は決まったのに設備が入らない」「デザインは決まったのに寸法が合わない」といった手戻りが起こりやすくなります。
店舗レイアウトは「配置と動線」を決める
店舗レイアウトとは、店舗の中で「何をどこに置き、お客様やスタッフがどう動くか」を決める工程です。客席や什器の配置、レジや受付の位置、バックヤードの広さといった空間の使い方を検討し、お客様動線とスタッフ動線が交錯しないように整理していきます。
この段階では、来店から退店までの一連の流れ、つまりお客様がどのような体験をしながら店内を移動するかという視点が重視されます。什器の配置ひとつで回遊のしやすさや居心地は大きく変わるため、レイアウトは店舗内装設計の土台となる工程といえます。
配置・ゾーニング・お客様動線・スタッフ動線をどの順番で考えるべきかは、店舗レイアウトの基本と失敗しない動線設計で詳しく解説しています。
店舗内装デザインは「見え方と印象」を決める
内装デザインとは、店舗の色、素材、照明、世界観など、「お客様の目にどう映るか」「どんな印象を持ってもらうか」を決める工程です。ブランドの世界観を表現する内装デザインは、看板や外観と並んで、来店するかどうかを左右する重要な要素になります。
ただし、内装デザインはあくまで見た目や印象を検討する工程であり、それだけでは工事を行うことはできません。色や素材のイメージが固まっても、寸法や設備条件と整合していなければ、実際の空間としては成立しないためです。
色・素材・照明・世界観を、お客様に価値が伝わる空間へつなげる考え方は、店舗内装デザインの役割と空間づくりで詳しく解説しています。
店舗内装設計は「実現できる形」に落とし込む
店舗内装設計は、店舗レイアウトで決めた配置や動線、内装デザインで決めた色や素材、世界観を、寸法・設備・法規・納まりを踏まえた「工事できる形」に具体化する工程です。電気容量は足りているか、給排水やガスの配管は通せるか、天井裏に空調ダクトを納められるか、消防法や保健所の基準を満たせるか。こうした現実的な条件と照らし合わせながら、図面という形に落とし込んでいきます。
どれだけ魅力的なレイアウトやデザインを描いても、設備や法規の制約を考慮せずに進めてしまうと、物件契約後や工事直前になって「この場所には配管が通せない」「電気容量が足りない」といった問題が発覚し、計画の見直しを迫られることになりかねません。店舗内装設計は、そうした事態を防ぎ、理想と現実を橋渡しする工程です。
このように、店舗レイアウトと内装デザインで固めたイメージを、寸法や設備条件と整合させながら図面に落とし込んでいく作業には専門的な知見が欠かせません。
| 領域 | 主な役割 | 決める内容 |
|---|---|---|
| 店舗レイアウト | 使い方と体験の流れ | 配置・動線・ゾーニング |
| 店舗内装デザイン | 見え方と印象 | 色・素材・照明・世界観 |
| 店舗内装設計 | 工事できる状態への具体化 | 寸法・設備・法規・図面 |
店舗レイアウト、内装デザイン、内装設計は、それぞれ独立した作業ではなく、順を追ってつながっていく一連の工程です。この関係性を理解しておくことで、次に解説する「店舗内装設計で決める主な内容」についても、なぜそれが必要なのかをイメージしやすくなります。
店舗内装設計で決める主な内容

店舗内装設計では、見た目のイメージを固めるだけでなく、実際に工事へ落とし込むための具体的な条件を一つずつ決めていきます。ここで扱う内容は、配置や寸法だけでなく、壁・床・天井といった仕上げ、電気や給排水、換気・空調といった設備、さらには消防や保健所への対応まで多岐にわたります。これらの条件は互いに関係し合っているため、どれか一つを後回しにすると、他の部分にも影響が及びます。この章では、店舗内装設計で具体的に何を決めるのかを整理して解説します。
配置・寸法・ゾーニング
店舗内装設計では、まず店内をどのように区切り、何をどこに配置するかという「配置・寸法・ゾーニング」を決めます。客席や施術席の位置、通路として確保すべき幅、厨房やバックヤードに必要な面積など、営業に直結する要素を寸法レベルで検討します。あわせて、収納スペースやレジ・受付の位置、トイレの配置も重要な検討項目です。
これらは単独で決められるものではなく、お客様とスタッフ、それぞれの動線が交差しないように、全体のバランスを見ながら調整していく必要があります。動線が悪いと、営業開始後にスタッフの負担が増えたり、お客様が居心地の悪さを感じたりする原因になります。
壁・床・天井・建具
次に決めるのが、壁・床・天井・建具といった内装の骨格部分です。間仕切りの位置や壁の仕上げ材、床材の選定、天井高さの設定、扉の種類や位置などを具体的に決めていきます。あわせて、防音性や防水性、清掃のしやすさといった機能面も検討が必要です。
例えば、飲食店であれば水を扱う場所の防水性が重要になりますし、サロンや施術店舗であれば防音性が求められる場合があります。デザイン面での見え方だけでなく、日々の営業や清掃のしやすさまで考慮して仕様を決めることが、長く使える店舗につながります。
電気・照明・通信設備
店舗運営に欠かせないのが電気・照明・通信設備です。店舗内装設計では、必要な電気容量の算定、コンセントの位置と数、専用回路が必要な機器の有無などを検討します。照明については、位置だけでなく調光の可否も含めて計画します。
また、看板用の電源や、POSレジ・Wi-Fiといった通信環境、厨房機器や美容機器で必要となる専用電源なども見落とされやすいポイントです。業種によって必要な電源容量や設備は大きく異なるため、営業内容に合わせた電気設備の計画が欠かせません。
給排水・ガス設備
飲食店や美容室など、水を扱う業種では給排水・ガス設備の計画が特に重要になります。シンクや厨房機器、シャンプー台の設置位置に応じて、排水勾配や給湯容量、ガス容量を検討します。厨房を持つ店舗では、グリストラップの設置が必要になる場合もあります。
これらの設備は、建物側の配管条件によって実現できる範囲が変わってきます。物件によっては、希望する設備を設置するために追加の配管工事が必要になることもあるため、早い段階での確認が重要です。
換気・空調設備
換気・空調設備も、店舗内装設計で決めるべき重要な要素です。厨房からの排気ルートやダクトの取り回し、給気とのバランス、空調能力の算定などを検討します。特に、調理を伴う飲食店では、臭気の広がり方や室温差にも配慮が必要です。
換気計画が不十分だと、営業開始後に臭いがこもったり、空調が効きにくかったりといった問題が発生することがあります。設備の能力は店舗の広さや業種によって必要な水準が異なるため、営業形態に合わせた計画が求められます。
消防・保健所・建築法規
店舗を開業するにあたっては、消防・保健所・建築法規への対応も欠かせません。防火区画や避難経路の確保、非常灯・誘導灯の設置、内装制限への対応、消防設備の設置などが代表的な項目です。業種によっては、飲食店営業許可や美容所登録といった手続きも必要になります。
また、店舗の用途によってはバリアフリー対応や用途変更の手続きが必要になる場合もあります。これらの条件は物件や自治体、業態によって適用される内容が異なるため、すべての案件に同じ条件が一律に当てはまるわけではありません。個別の物件・業種に応じて、必要な対応を確認しながら進めることが大切です。
| 決定項目 | 主な検討内容 |
|---|---|
| 配置・寸法・ゾーニング | 客席・施術席の配置、通路幅、厨房面積、動線計画 |
| 壁・床・天井・建具 | 仕上げ材、天井高さ、扉、防音・防水・清掃性 |
| 電気・照明・通信設備 | 電気容量、コンセント、専用回路、照明計画、通信環境 |
| 給排水・ガス設備 | シンク・シャンプー台、排水勾配、給湯・ガス容量 |
| 換気・空調設備 | 厨房排気、ダクト、給気、空調能力 |
| 消防・保健所・建築法規 | 防火区画、避難経路、内装制限、営業許可・登録 |
このように、店舗内装設計で決める内容は多岐にわたり、それぞれが密接に関わり合っています。
業種ごとに異なる店舗内装設計のポイント

店舗内装設計で決めるべき内容は、業種によって大きく異なります。同じ「飲食店」であっても業態によって厨房設備の規模は変わりますし、美容室と物販店では必要な設備がまったく違います。ここでは代表的な業種ごとに、特に注意して設計すべきポイントを解説します。自分の業種に近い項目を確認し、物件選びや設計依頼の際に確認すべき視点として役立ててください。
飲食店
飲食店の内装設計では、厨房設備への対応が最も重要な要素になります。厨房機器の種類や台数によって必要な給排水容量やガス容量が変わり、物件によってはそもそも十分な設備容量が確保できないケースもあります。
また、厨房からの臭気や熱気を屋外へ排出するための換気・排気ダクトの計画も欠かせません。グリストラップの設置や排水勾配の確保、床の防水処理など、厨房特有の仕様を満たす必要があります。
保健所の飲食店営業許可を取得するためには、厨房と客席の区画、手洗い設備、シンクの数など、法規上の基準を満たした設計が求められます。さらに、客席とスタッフの動線が交錯しないよう、配膳や下膳の動きまで考慮したレイアウトが重要です。
| 検討項目 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 厨房設備 | 機器の台数・電気容量・ガス容量 |
| 給排水 | シンク数・排水勾配・グリストラップ |
| 換気 | 排気ダクトの経路・臭気対策 |
| 法規 | 保健所の営業許可基準・防水仕様 |
| 動線 | 客席とスタッフの動線分離 |
美容室・理容室
美容室・理容室では、シャンプー台まわりの給排水と給湯能力が設計上の重要なポイントになります。席数が多い店舗では、同時に複数のシャンプー台を使用しても給湯量が不足しないよう設備を計画する必要があります。
また、ドライヤーやパーマ機器など、消費電力の大きい美容機器を複数台同時に使用することを想定した電気容量の確保も欠かせません。セット面の配置は、鏡やコンセントの位置と合わせて、施術のしやすさとお客様から見た店内の印象の両方に関わります。
薬剤の保管スペースや、スタッフが施術の合間に移動する動線も、快適な店舗運営のためには設計段階で整理しておく必要があります。美容所として保健所への届出が必要になるため、洗い場や消毒設備など、登録基準を満たす設計が求められます。
サロン・クリニック・施術店舗
サロンやクリニックなど個室での施術を伴う店舗では、プライバシーへの配慮が設計上の大きなテーマになります。個室間の防音性能や、待合スペースから施術室が見えない動線計画など、お客様が安心して過ごせる空間づくりが重要です。
照明計画も業種によって求められる条件が異なります。リラックスを重視するサロンでは落ち着いた照明が好まれる一方、医療的な処置を伴うクリニックでは正確な視認性を確保できる照明が必要です。
また、施術内容によっては薬剤や機器から発生するにおいへの換気対応が必要になる場合もあります。お客様の来店から会計までの動線と、スタッフが施術準備や片付けを行う動線を分けて計画することで、落ち着いた空間を保ちやすくなります。
物販店
物販店の内装設計では、商品を魅力的に見せる陳列什器の配置と、お客様が店内を回遊しやすい動線計画が中心になります。什器の高さや通路幅は、商品の見やすさとお客様の移動のしやすさの両方に影響します。
バックヤードでは、荷受けのスペースや在庫の保管方法を考慮したレイアウトが必要です。レジまわりは、会計時の動線がスムーズになるよう、待機スペースや袋詰めスペースも含めて計画します。
防犯の観点から、死角ができにくい什器配置や、防犯カメラ・ミラーの設置位置も設計段階で検討しておくべき項目です。照明は商品を引き立てる役割を持つため、什器の配置と合わせて計画することで、売り場全体の印象が大きく変わります。
このように、業種によって必要となる設備や動線の条件は異なります。自分の業種に求められる設備や、関連する法律への対応をもれなく整理し、それを実現するためには専門的な視点が欠かせません。もし、物件探しの段階から設備に関する条件を確認したい場合や、業種ならではの設計ポイントを踏まえた提案を受けたい場合には、店舗デザイン会社に早めに相談することも検討するとよいでしょう。
店舗内装設計で作成する主な図面

店舗内装設計では、完成イメージを伝えるための資料だけでなく、施工会社が現場で正確に工事を進めるための図面を複数作成します。図面の種類が多いのは、関わる職人や業者ごとに必要な情報が異なるためであり、これらが揃うことで初めて、どの施工会社でも同じ条件で見積もりや工事ができる状態になります。ここでは、店舗内装設計で作成される代表的な図面を紹介します。
平面図
平面図は、店舗全体の間取りと配置を示す図面です。壁の位置や通路の幅、客席やレジ、厨房、バックヤードなどの配置と寸法が記載され、店舗内装設計の土台となる資料です。什器の配置やお客様・スタッフの動線もこの図面をもとに検討されるため、レイアウト検討の内容がそのまま反映される図面といえます。
展開図
展開図は、店内の壁面を立面として表した図面です。壁ごとの高さや仕上げ材、造作の形状、コンセントやスイッチの位置などが示されます。平面図だけでは分からない「立ち上がりの見え方」を確認できるため、内装デザインで検討した色や素材、造作の納まりを具体的な形に落とし込む役割を持ちます。
天井伏図・照明図
天井伏図は、天井を下から見上げた形で表現し、天井の形状や段差、素材などを示す図面です。照明図と合わせて作成されることが多く、照明の位置や種類、空調の吹き出し口、点検口、スピーカー、火災報知器の設置位置なども記載されます。天井まわりは電気設備や消防設備とも関わるため、他の設備図面との整合性が特に重要になる部分です。
電気・給排水・設備図
電気設備図には、コンセントの位置や数、専用回路、電気容量などが示されます。給排水設備図には、給水・排水の配管ルートやシンク、厨房機器、シャンプー台などの位置が記載されます。このほか、ガス設備や換気・空調に関する設備図も作成され、厨房機器や美容機器など、業種特有の設備を正しく使うために欠かせない図面です。設備の容量や配管ルートは物件の条件によって制約を受けるため、現地調査の結果と照らし合わせながら作成されます。
造作家具図・詳細図
造作家具図は、カウンターや棚、収納、レジ台など、現場で製作する家具や造作物の形状・寸法を示す図面です。詳細図では、建具や什器の納まり部分など、寸法だけでは伝わりにくい構造や仕上げの取り合いを拡大して示します。デザイン性の高い造作ほど、詳細図の精度が仕上がりを左右します。
仕上表・仕様書
仕上表は、壁・床・天井など部位ごとに使用する材料や色、品番、メーカーをまとめた資料です。仕様書には、施工方法や使用する部材の詳細な指定が記載されます。これらの資料があることで、口頭では伝えきれない仕上げの意図を正確に共有でき、施工会社によって仕上がりに差が出ることを防げます。
これらの図面は、単に種類を揃えることが目的ではありません。設計資料が一式揃うことで、複数の施工会社が同じ条件のもとで見積もりを作成できるようになり、金額や工事内容を正しく比較できる状態が生まれます。図面が不足したまま見積もりを依頼すると、施工会社ごとに想定する仕様や工事範囲が異なり、後になって追加費用が発生する原因にもなりかねません。
店舗内装設計の進め方

店舗内装設計は、いきなり図面を描くところから始まるわけではありません。構想の整理から竣工確認まで、いくつかの段階を経て少しずつ具体化していきます。ここでは、一般的な進め方を順を追って解説します。
構想と営業条件を整理する
最初に行うのは、どんな店舗にしたいのかという構想と、営業条件の整理です。業種、ターゲット、客単価、席数、営業時間、スタッフ数、提供方法、必要設備など、営業の土台となる条件をまとめます。
この段階の整理が曖昧なままだと、後のレイアウト検討や設備計画で判断がぶれてしまいます。「誰に来てほしいか」「どんな体験を提供したいか」まで含めて言語化しておくことが、以降のすべての設計判断の軸になります。
| 整理する項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 業種 | 飲食店、美容室、サロン、物販店など |
| ターゲット | 年齢層、利用シーン、来店動機 |
| 客単価・席数 | 想定する売上構成の目安 |
| 営業時間・スタッフ数 | シフトや人員配置の前提 |
| 提供方法 | 接客の形式、施術内容、商品の見せ方 |
| 必要設備 | 厨房機器、美容機器、什器など業種特有の設備 |
物件調査・現地確認を行う
構想が固まったら、実際の物件を調査し、現地で条件を確認します。面積、天井高さ、電気容量、給排水、ガス、換気、搬入経路、管理規約、原状回復条件など、物件ごとに異なる条件を確認する工程です。
この確認を省略したまま計画を進めると、契約後に「電気容量が足りない」「排水経路が確保できない」といった問題が発覚し、計画の変更を迫られることがあります。物件契約前に設計の視点で現地を確認しておくことで、契約後の設備不足によるトラブルを防ぎやすくなります。
電気容量、給排水、換気、管理規約など、契約前に確認したい条件については、内装まで見据えた店舗物件の探し方で詳しく解説しています。
レイアウトを検討する
物件条件が把握できたら、ゾーニングや動線を含めたレイアウトの検討に入ります。席数、客席とスタッフエリアの区分け、見せ場となる場所など、空間の使い方を具体的に組み立てていきます。
この段階では、見た目の配置だけでなく、お客様とスタッフそれぞれの動線が交錯しないか、作業効率が保たれるかといった実務的な視点も重要になります。
基本設計・内装デザインをまとめる
レイアウトの方向性が固まったら、平面計画とあわせて仕上げ、色、素材、照明など、内装デザインの要素をまとめていきます。この段階では、店舗全体の世界観やブランドイメージを具体的な仕上げ材や色味に落とし込んでいきます。
基本設計は、完成イメージを関係者間で共有するための重要な工程です。ここで方向性を固めておくことで、後の実施設計がスムーズに進みます。
実施設計で詳細を詰める
基本設計で固めた方向性を、実際に工事できる精度まで落とし込むのが実施設計です。寸法、設備、納まり、法規、施工方法などを詳細に検討し、図面一式を整えていきます。
この段階の図面が整っているかどうかが、後の見積もり精度に直結します。実施設計まで丁寧に行うことで、施工会社が同じ条件で正確に見積もりできる状態が整います。
施工会社へ見積もりを依頼する
設計図面が整った段階で、施工会社へ見積もりを依頼します。複数の施工会社に同じ設計資料を提示することで、条件を揃えた比較が可能になります。
見積もりを確認する際は、工事項目に抜け漏れがないか、金額だけで判断せず内容を精査することが大切です。
工事監理・竣工確認を行う
見積もりが確定し工事が始まったら、図面どおりに施工されているかを確認する工事監理の工程に入ります。現場では、設計時には想定していなかった納まりの調整が必要になることもあり、その都度対応を判断します。
工事完了後は、仕上がりの確認や設備の試運転を行い、必要があれば是正を依頼します。竣工確認までを丁寧に行うことで、図面の意図どおりの店舗が完成します。
正確な相見積もりは、店舗内装設計の後に行う

店舗の開業準備を進めていると、少しでも費用を抑えたいという思いから、早い段階で複数の施工会社に見積もりを依頼したくなるものです。しかし、設計図面がまだ整っていない段階での相見積もりは、かえって比較を難しくし、判断を誤らせる原因になります。ここでは、その理由を具体的に解説します。
設計資料がないと条件を揃えられない
相見積もりは本来、同じ条件のもとで各社の金額を比較するために行うものです。しかし、設計図面がない状態で依頼すると、各社が自社の解釈で工事範囲や仕様を想定して見積もりを作成することになります。その結果、次のような違いが生まれます。
| 比較項目 | 設計図面がない場合に起こること |
|---|---|
| 工事の想定範囲 | 各社の想定範囲が異なり、含まれる工事と含まれない工事がバラバラになる |
| 材料・設備の仕様 | 使用する建材や設備のグレードが会社ごとに異なり、金額差の理由が分からない |
| 見た目の安さ | 一見安く見える見積もりに、必要な工事が含まれていないことがある |
| 工事後の追加費用 | 着工後に不足が判明し、追加工事や設計変更が発生しやすくなる |
つまり、設計図面という「共通のものさし」がないまま金額だけを比較しても、本当に安いのか、単に条件が抜けているだけなのかを見分けることができません。金額の大小だけで施工会社を選んでしまうと、契約後に想定外の追加費用が発生し、結果的に総額が高くなるケースも少なくありません。
概算見積もりと正式見積もりは違う
物件探しや事業計画の段階では、大まかな資金計画を立てるために概算見積もりを取ることがあります。この概算見積もりは、あくまで資金計画の目安として活用するものであり、そのまま契約判断に使えるほどの精度は持っていません。
一方、正式な見積もりは、平面図や展開図、設備図などの設計資料をもとに、工事内容・数量・仕様を具体的に積算したものです。本来の意味での相見積もりは、この正式見積もりの段階で行うべきものであり、設計が固まる前の概算段階で複数社を比較しても、精度の低い数字同士を比べることになってしまいます。
資金計画の初期段階では概算見積もりを活用しつつ、施工会社を正式に選定する際には、設計図面をもとにした正式見積もりで比較するという使い分けを意識することが大切です。
設計と施工を分けるメリット
店舗内装設計を専門とする会社に依頼し、設計と施工の会社を分けて進める方法には、いくつかのメリットがあります。
- 設計者が第三者の立場で図面を作成するため、設計意図が施工段階まで守られやすい
- 同じ設計図面をもとに複数の施工会社へ見積もりを依頼できるため、条件を揃えた比較がしやすい
- 見積もりの内訳を設計者がチェックできるため、金額の透明性が高まる
- 施工会社の工事監理と設計者の別々の視点が加わることで、現場での仕様変更や施工不備を早い段階で確認できる
設計施工一括方式には、窓口を一つにまとめやすく、設計と工事の調整を素早く進めやすいというメリットがあります。しかし、複数の工事会社を比較したい場合や、第三者による工事のチェックを重視する場合には、設計と施工を別々に分ける方法が向いています。
店舗内装設計は、工事の技術だけでなく、施工会社との適切な関係を保つことや、見積もりを客観的にしっかり確認できる体制を整えることで、初めて価値が生まれます。特に、相見積もりで失敗しないためには、まずあなたの考えや希望を正確にくみ取り、設計図面にしっかり落とし込むことを優先するのが良いでしょう。
店舗内装設計で失敗しやすいポイント

店舗内装設計では、いくつかの共通した失敗パターンがあります。あらかじめ知っておくことで、多くのトラブルは未然に防ぐことができます。ここでは、実際の現場でよく見られる失敗例を紹介します。
見た目から決めてしまう
店舗づくりを始める際、色や素材、家具のデザインといった見た目の印象から先に決めてしまうと、後から寸法や設備の制約にぶつかりやすくなります。理想のデザインを描いても、電気容量や給排水の位置、天井高さなどの条件が合わなければ、大幅な変更を迫られることになります。デザインを検討する前に、店舗内装設計の観点から実現可能な範囲を把握しておくことが重要です。
物件契約後に設備不足が分かる
物件を契約してから、電気容量が足りない、給排水管が届いていない、ガス容量が不足しているといった問題が判明するケースは少なくありません。物件契約前に店舗内装設計の視点で現地調査を行っていれば防げた問題であることがほとんどです。特に飲食店や美容室のように設備条件が厳しい業種では、契約後の設備不足が開業スケジュールの遅れや追加費用に直結します。
設計図面が少ないまま見積もりを取る
平面図だけを施工会社に渡して見積もりを依頼すると、各社が独自の想定で金額を出すことになります。展開図や電気・給排水・空調などの設備図、仕上表がなければ、施工会社ごとに使用する材料や施工範囲の解釈が異なり、正確な比較ができません。図面が少ない状態での見積もりは、金額の安さだけで判断してしまう原因にもなります。
施工会社ごとに見積もり条件が違う
同じ物件、同じ業種であっても、施工会社によって見積もりに含まれる工事範囲や仕様が異なることがあります。ある会社は電気工事を含めていても、別の会社は含めていないといった違いがあると、単純な金額比較では判断を誤ります。次の表は、条件を揃えずに見積もりを取った場合に起こりやすい違いの例です。
| 比較項目 | A社の見積もり | B社の見積もり |
|---|---|---|
| 電気工事 | 含む | 別途 |
| 仕上げ材のグレード | 標準仕様 | 簡易仕様 |
| 造作家具 | 詳細図あり | 概算のみ |
このような差異を見抜くためにも、設計図面と仕様書をあらかじめ揃えたうえで見積もりを依頼することが欠かせません。
動線と設備を別々に考える
お客様やスタッフの動線は、電気・給排水・換気といった設備計画と切り離して考えることはできません。たとえば、厨房の配置を先に決めてから給排水の位置について検討すると、配管ルートが長くなり、その分工事費が高くなる場合があります。一方で、設備の条件ばかりを優先すると、動線が非効率となり、営業のしやすさが損なわれることもあります。そのため、動線と設備は同時に検討し、どちらにも無理のない形にまとめる必要があります。この点は、店舗内装設計を専門とする会社が特に強みを発揮するポイントでもあります。
開業後の営業を具体的に想像していない
設計段階では見た目や設備の検討に意識が向きがちですが、実際に営業を始めてからの動きを具体的に想像できていないと、開業後に使いにくさが表面化します。ピーク時にスタッフが動きやすいか、レジ前に行列ができたときに他のお客様の動線を妨げないか、清掃や在庫補充のタイミングで支障が出ないかといった点は、営業経験がなければ見落としやすい部分です。設計の段階から、開業後の一日の流れを具体的に思い描きながら検討することが求められます。
店舗内装設計の依頼先を選ぶポイント

店舗内装設計を依頼する会社によって、できあがる空間の完成度も、開業までのスムーズさも大きく変わります。ここでは、依頼先を選ぶ際に確認しておきたい5つのポイントを解説します。
店舗設計の実績があるか
依頼先を選ぶ際、まず確認したいのが店舗設計の実績です。住宅設計を得意とする会社と、店舗設計を得意とする会社では、必要となる知識や配慮すべき点が大きく異なります。
店舗の場合、業種ごとに必要な設備や営業条件を理解しているかどうかが、設計の質を大きく左右します。飲食店であれば厨房設備やグリストラップ、美容室であればシャンプー台の給排水など、業種特有の条件に対応した経験があるかを確認しましょう。
過去の実績を確認する際は、施工事例の写真だけでなく、どのような業種・規模の案件を手掛けてきたか、実際にどのような課題を解決してきたかまで聞いてみることをおすすめします。
設計範囲が明確か
店舗内装設計と一口にいっても、会社によって対応する範囲はさまざまです。依頼前に、どこまでを設計会社が担当するのか明確にしておく必要があります。
| 設計範囲 | 内容 |
|---|---|
| レイアウト | 配置・動線・ゾーニングの検討 |
| デザイン | 色・素材・照明などの世界観づくり |
| 設備設計 | 電気・給排水・換気・空調の計画 |
| 図面 | 平面図・展開図・設備図などの作成 |
| 申請 | 消防・保健所などへの申請対応 |
| 見積もり調整 | 施工会社への見積もり依頼・比較 |
| 工事監理 | 図面どおりに施工されているかの確認 |
この範囲が曖昧なまま契約すると、「デザインは提案してもらえたが、設備設計や申請は自分で手配することになった」といった行き違いが起こりやすくなります。契約前に、どこまでを担当してもらえるのか具体的に確認しておきましょう。
作成する図面が明確か
「設計一式」という表現だけで契約内容を判断するのは避けたほうがよいでしょう。実際にどの図面を、どこまでの精度で作成してもらえるのかを事前に確認することが重要です。
平面図だけで終わるのか、展開図や天井伏図、電気・給排水などの設備図、造作家具図まで含まれるのかによって、施工会社が正確に見積もりできるかどうかが変わってきます。納品される図面の一覧を事前に提示してもらい、認識のずれがないようにしておきましょう。
施工会社との関係が透明か
設計会社と施工会社の関係性も、確認しておきたいポイントの一つです。設計会社が自社で施工まで行うのか、設計と施工を分離して発注できるのか、あるいは特定の施工会社を紹介する形になるのかによって、見積もりの透明性が変わってきます。
設計会社と施工会社の間に紹介料や業務上の提携関係がある場合は、その関係や費用の扱いについて事前に説明を受けておくと安心です。複数社を比較できるか、見積もりの内訳を確認できるかもあわせて確認しましょう。
お客様の体験まで考えているか
寸法や設備といった技術的な条件を正確に設計できることは、依頼先を選ぶうえで欠かせない前提です。しかし、それだけでは「工事ができる図面」はできても、「選ばれるお店」になるとは限りません。
誰に来てほしいのか、どのような時間を過ごしてほしいのか、そして何を魅力として伝えたいのか。このような問いに真剣に向き合い、その内容を設計にきちんと反映できるかどうかは、依頼先を選ぶ際の大きな分かれ目です。単に見た目だけを整えるのではなく、動線や設備のひとつひとつが、招きたいお客様の体験につながるかどうかを一緒に考えてくれる会社を選ぶことが重要です。
このような視点を大事にしたい場合は、ロベイションのような会社に相談することも選択肢の一つとして検討するとよいでしょう。
店舗内装設計の費用は何で決まるか

店舗内装設計の費用は、面積や坪単価だけで単純に決まるものではありません。業種や設備の複雑さ、作成する図面の範囲、申請・調整業務の有無など、複数の要因が組み合わさって金額が変動します。ここでは、設計費用に影響する主な要因を整理します。
店舗の面積
店舗内装設計の費用は、店舗の面積に応じて変動します。面積が広くなるほど、平面図や展開図で検討すべき範囲が増え、動線計画やゾーニングの検討にかかる作業量も増加します。
ただし、面積が小さいからといって設計が簡単になるとは限りません。限られた空間の中で客席、厨房、バックヤード、動線を成立させる必要がある小規模店舗では、狭さゆえの検討事項が増えることもあります。
業種と設備の複雑さ
業種によって必要な設備の種類と複雑さが異なるため、設計費用にも差が生じます。厨房設備、給排水、ガス、換気を伴う飲食店や、給湯・電気容量の検討が必要な美容室は、物販店に比べて設備設計の検討項目が多くなる傾向があります。
個室や防音性を求められるサロン・クリニックなども、換気計画や動線計画が複雑になりやすく、その分設計に必要な作業量が増えることがあります。
| 業種 | 設備検討の主な内容 | 設計への影響 |
|---|---|---|
| 飲食店 | 厨房設備・給排水・ガス・換気 | 設備図の検討項目が多い |
| 美容室・理容室 | シャンプー台・給湯・電気容量 | 給排水・電気設備の調整が必要 |
| サロン・クリニック | 防音・換気・個室動線 | 動線計画が複雑になりやすい |
| 物販店 | 陳列什器・照明・防犯 | 設備検討は比較的少ない |
作成する図面の範囲
設計費用は、作成する図面の範囲によっても変わります。平面図のみを作成する場合と、展開図、天井伏図、電気・給排水設備図、造作家具図、仕上表まで一式作成する場合とでは、必要な作業量が異なります。
図面の範囲が狭いと設計費用は抑えられますが、施工会社が正確に見積もりを出すための資料が不足し、後から追加費用が発生する可能性があります。設計費用だけを見るのではなく、どこまでの図面が含まれているかを確認することが重要です。
申請・調整業務の有無
店舗内装設計には、保健所への飲食店営業許可申請や美容所登録、消防設備に関する届出、用途変更の手続きなど、各種申請・調整業務が伴うことがあります。これらの業務を設計者が代行する場合、その分の業務量が費用に反映されます。
物件によっては、管理会社やビルオーナーとの調整、既存設備の確認や図面化など、目に見えにくい調整業務が発生することもあります。契約前にこうした業務がどこまで含まれているかを確認しておくと、後のトラブルを避けやすくなります。
工事監理の有無
設計費用には、図面作成だけでなく、工事が図面どおりに進んでいるかを確認する工事監理が含まれる場合と含まれない場合があります。工事監理を行うことで、現場での変更や施工ミスに早い段階で対応できますが、その分の業務が費用に加算されます。
工事監理が設計費用に含まれているかどうかは会社によって異なるため、見積もりを比較する際は、この業務の有無を必ず確認する必要があります。
店舗内装にかかる費用全体の内訳や予算配分について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
設計費用の変動要因を理解したうえで、電気容量や給排水、換気、動線といった現実的な条件を一つずつ整理していくことになりますが、それだけでは選ばれる店舗になるとは限りません。コストや設備の判断を、来てほしいお客様の安心や期待、居心地のよさに結びつけて考えることが重要です。
店舗内装設計を始める前に整理したいこと

店舗内装設計は、寸法や設備、図面といった具体的な要素を扱う仕事です。しかし、それらの条件を決める前に整理しておくべきことがあります。それは、誰にどんな体験を提供し、何を選ばれる理由にするお店にするのかという、お店の土台となる考え方です。
この整理をせずに設計を進めると、レイアウトや設備の判断基準がその場ごとにばらつき、完成した店舗の印象が定まらないという結果になりがちです。設計を依頼する前に、次の5つの問いについて考えを整理しておくことをおすすめします。
誰に来てほしいか
店舗内装設計では、客席の広さやスタッフの動線、設備の容量など、あらゆる寸法や配置を決めていきます。しかし、それらの判断基準になるのは、どんなお客様に来てほしいかという前提です。
年齢層、来店の目的、一人で来るのかグループで来るのか、どのくらいの頻度で通ってほしいのかによって、必要な席数や空間の広さ、動線の考え方は変わります。ターゲットが曖昧なまま設計を進めると、誰にとっても中途半端な空間になりやすくなります。
何を魅力として伝えたいか
内装デザインでは色や素材、照明で店舗の印象を作りますが、その前提として、何を魅力として伝えたいのかが明確になっている必要があります。
味なのか、技術なのか、居心地なのか、非日常感なのか。伝えたい魅力によって、見せ場をどこに作るか、素材に何を選ぶか、照明をどう当てるかという設計判断が変わってきます。魅力が定まっていないと、デザインの方向性を決める段階で迷いが生じやすくなります。
どんな営業方法にするか
営業方法は、設備や動線の設計に直接関わる要素です。以下のような営業条件によって、必要な設備や店舗内の配置は大きく変わります。
| 営業条件 | 設計に影響する内容 |
|---|---|
| 客席のみか、テイクアウトも行うか | 受け渡しカウンターの位置、動線の分離 |
| 予約制か、当日来店中心か | 待合スペースの要否、受付の設計 |
| 個室対応があるか | 間仕切り、防音、換気ルート |
| 営業時間の長さ | 照明計画、空調能力 |
営業方法が具体的に決まっていないと、設計段階で条件が二転三転し、図面の作り直しや工事内容の変更につながることがあります。
何に予算をかけるか
店舗内装にかけられる予算には限りがあります。すべての要素に均等に予算を配分するのではなく、何に重点を置き、何を抑えるかという優先順位を先に整理しておくことが重要です。
見せ場となる客席まわりに予算を集中させ、バックヤードは機能性を優先して抑える、といった判断は、お店として何を大切にするかが明確になっていないと決められません。予算配分の優先順位が曖昧なまま設計に入ると、後から「思っていたところにお金をかけられなかった」という結果になりやすくなります。
どんな体験をしてほしいか
店舗内装設計は、配置・動線・設備・寸法という現実的な条件を積み上げていく作業です。しかし、その積み上げの先にあるべきなのは、お客様にどんな体験をしてほしいかという視点です。
入店した瞬間に何を感じてほしいか、滞在時間をどう過ごしてほしいか、退店するときにどんな印象を持ち帰ってほしいか。この体験の設計ができてはじめて、動線や設備、照明といった個々の判断が一つの方向にそろっていきます。
店舗内装設計では、電気容量、給排水、換気、動線、予算など、現実的な条件を一つずつ整理する必要があります。ただし、目先の問題を解決するだけでは、選ばれるお店になるとは限りません。大切なのは、コストや動線の判断を、来てほしいお客様の安心や期待、居心地、再来店したくなる体験へ結びつけることです。
店舗内装設計は、図面を書くことから始まるわけではありません。どんなお客様に、どんな体験を提供し、何を選ばれる理由にするのかが整理されてはじめて、レイアウトや設備、予算配分の判断軸が生まれます。
よくある質問
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店舗内装設計と内装デザインは同じですか?
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厳密には異なります。内装デザインは色・素材・照明・世界観など「見え方と印象」を決める領域であり、店舗内装設計は寸法・電気・給排水・換気・法規といった条件を踏まえて「実際に工事できる形」へ落とし込む領域です。デザインイメージがどれほど魅力的でも、電気容量や排水経路、天井高さなどの条件と整合していなければ、そのまま工事することはできません。内装デザインで方向性を固め、内装設計でそれを実現可能な図面や仕様に変換する、という関係で理解すると分かりやすくなります。
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店舗内装設計はいつ依頼すればよいですか?
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理想的なのは、物件を正式契約する前、少なくとも物件候補が絞られた段階です。物件によって電気容量、給排水の位置、天井高さ、ガスの有無、管理規約による工事制限などが異なり、これらは業種や営業内容によって「使えるかどうか」が大きく変わります。契約後に設計を始めると、必要な設備が確保できていないことが判明し、追加工事や計画変更を迫られるケースが少なくありません。構想と営業条件がある程度固まった時点で、物件確定前から設計者に相談しておくことで、判断のやり直しを防ぎやすくなります。
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物件契約前でも相談できますか?
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相談は可能です。むしろ物件契約前の相談こそ、店舗内装設計において本来もっとも価値のあるタイミングです。候補となる物件の図面や現況を確認し、業種に必要な電気容量、給排水、換気、ガスなどの設備条件が満たせるか、動線やレイアウトが成立するかを事前に検討することで、契約後に「この物件では希望する営業ができない」という事態を避けやすくなります。店舗設計の実績がある会社であれば、物件選定段階から同席し、現地調査を行った上で助言できる体制を整えていることがあります。こうしたロベイションのような会社に相談することも検討するとよいでしょう。
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設計図がなくても施工見積もりは取れますか?
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取ること自体は可能ですが、精度の高い比較はできません。設計図がない状態での見積もりは、各施工会社が独自の想定で材料や工事範囲、設備仕様を補って算出するため、同じ条件で金額を比較することができず、安く見える見積もりに後から追加工事費用が発生することがあります。正式な見積もり比較を行うには、平面図、展開図、天井伏図、電気・給排水などの設備図、仕上表といった設計資料を整えたうえで依頼することが前提になります。物件契約前の概算段階では簡易な見積もりで資金計画の目安をつかみ、設計が完了した段階で正式な相見積もりを取る、という順序が適切です。
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設計会社と施工会社は分けたほうがよいですか?
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分けることで得られるメリットがあります。設計と施工を同一会社に依頼すると、その会社の施工範囲や得意な工法に合わせて設計内容が決まりやすく、比較の基準を持ちにくくなる場合があります。設計を独立させることで、設計意図を保ちながら複数の施工会社に同じ条件で見積もりを依頼でき、金額や工事内容の透明性を確保しやすくなります。また、工事が始まった後も、設計者が第三者の立場で図面どおりに施工されているかを確認できるため、現場での仕様変更や品質低下に気づきやすくなるという利点もあります。依頼先を選ぶ際は、設計と施工の関係が明確に説明できるかどうかを確認するとよいでしょう。
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店舗内装設計ではどこまで図面を作りますか?
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一般的には、平面図、展開図、天井伏図・照明図、電気・給排水・設備図、造作家具図・詳細図、仕上表・仕様書までを作成します。これらの図面がひととおり揃うことで、施工会社は寸法や仕様を独自に補うことなく、同一の条件で正式な見積もりを作成できる状態になります。ただし、店舗の規模や業種、契約内容によって作成範囲は異なり、すべての案件で同じ図面一式が必要になるとは限りません。依頼前には、どこまでの図面を納品するのか、設計範囲として明確に提示してもらうことが重要です。
まとめ
この記事の要点を以下にまとめます。
- 店舗内装設計とは、レイアウトやデザインを「工事できる形」に落とし込む工程であること
- 設計では配置・寸法・設備・法規まで幅広く検討し、平面図や展開図など複数の図面を作成すること
- 設計図がないまま相見積もりを取ると条件が揃わず、正しい比較ができないこと
- 業種や物件条件によって注意すべきポイントが異なるため、早い段階での確認が失敗を防ぐこと
理想の店舗を実現するには、見た目だけでなく動線や設備までを含めた設計段階での検討が欠かせません。判断に迷うときは、店舗設計デザイナーなどの専門家に相談し、ターゲットにとって居心地のよい空間づくりを目指しましょう。あなたが思い描くお店の実現に、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。


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