私たちについて
唯一無二の店だと思っていました。3年、続きませんでした。
まだ私がデザイン事務所で働いていたころの話です。
あるラーメン店の設計に携わったことがありました。
その店は駅前の物件で、オーナーの個性を存分に表現した内装でした。そのため、費用も多くかかりました。
オーナーの人柄と、それを引き立てるデザインが調和し、他にはない唯一の店になったと、私は感じていました。
数年後、そこは別の店になっていました。
3年も経っていなかったはずです。
仕上がりはきれいで、オーナーにも喜んでもらえました。
それでも、続くことはありませんでした。
私たちは、オーナーの側にしか立っていませんでした。
長く考えた末、私は次のような結論にたどり着きました。
オーナーがやりたいことが、必ずしもお客様にとって価値があるとは限りません。
一見当たり前に思えますが、ものをつくる立場にいると、この事実を見落としがちです。
特に、オーナー自身の想いが強いほど、自分の考えや理想を形にすることこそが正しいと思えてしまうのです。
これはオーナーご本人にもよく起こる現象です。
実は、自分の店のことほど、意外と客観的に見るのは難しいものです。
毎日そのことばかり考えてきた人ほど、はじめてお店の前に立つお客様の視点から物事を考えるのが、次第に難しくなっていきます。
いま、私たちが設計の前に必ずやること。
私たちは、図面を引く前に、この2つの要素を結びつけます。
① オーナーが実現したいこと
なぜ、このお店を持とうと考えたのか。何を大切にしたいのか。
② お客様がそこで得られるもの
どんな気持ちで来店し、帰るときに何を持ち帰るのか。
この2つがしっかり結びついていることを確認してから、はじめて図面を描き始めます。
デザインを、単にかっこよく仕上げる作業ととらえるのではなく、お客様に選ばれるための手段として活用します。
私たちは、そう考えています。
たとえば、こんな案件がありました
8.4坪の、小さな美容室です。
そのオーナーの手元には、すでに別の業者が作ったプランがありました。
設備の位置を優先したプランです。
配管が短く済む位置にシャンプー台を置き、そこから逆算して壁の位置が決まっていました。
工事のことだけを考えれば、合理的です。費用も抑えられます。
ただ、入口の近くまで壁が迫っていました。
図面上の席数は、どちらも2席。数字は同じです。
でも、ドアを開けた人が感じる広さが違いました。

私たちは、2つの案をお出ししました。
A案 ── 既存プランの設備位置はそのままに、使いやすさだけを改善したもの。費用は抑えられます。
B案 ── 入ったときの広さと、2席それぞれのゆとりを優先し、設備の位置から考え直したもの。
A案の方が安く済むことも、正直にお伝えしました。
選ばれたのは、B案でした。

そして打ち合わせの中で、
「まず1席で開けて、様子を見ながら2席に増やす」という進め方も決まりました。
かけるべき場所にお金をかけ、それ以外は抑える。
均等に配らない。
このお店は今、近隣より高い料金設定で営業しています。
ホットペッパービューティーの口コミ評価は、5.0です。
席数は変わっていません。図面の考え方が違っただけです。
その結果、起きていること。
私たちが手がけたお店では、ポータルサイトで口コミ評価が4以上となるお店が増えています。
ただし、あらかじめお伝えしておきたいことがあります。
私たちのつくるお店は、オープン当初から爆発的に話題になるようなものではありません。それは、意図的にそのような形を目指していないからです。
その代わり、時間をかけてリピーターが増えていきます。また、高い口コミ評価が次々と新しいお客様を呼び寄せてくれます。
1年、3年、5年と年月を重ねるごとに、お店に通うお客様が増えていく。
私たちが目指しているのは、まさにそんなお店です。
こういう方には、向いていないかもしれません。
- オープンと同時に話題になることを、最優先したい方
- イメージが完全に決まっていて、その通りに形にしてほしい方
- デザインは必要ない、と考えている方
私たちの進め方は、時間がかかります。
最初の打ち合わせで、内装の希望から聞くことはありません。
こういう方に、いちばん力になれます。
- やりたいことはある。でも、それだけでうまくいくのか不安な方
- 他と違うことをやろうとしているからこそ、埋もれることが怖い方
- 開業してからの10年を、いちばん大事に考えている方
あなたのやりたいことは、間違っていません。
必要なのは、それがお客様から見ても「行きたい理由」になっているかを、一度確かめることだけです。

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