美容室のセット面|4つのタイプと、鏡・照明で失敗しない5つのポイント
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セット面とは、美容室でお客様が座ってカットやスタイリングを受ける席のことです。椅子・鏡・カウンター(道具を置く台)がひとまとまりになっていて、お客様が来店中にいちばん長く過ごす場所でもあります。
だからこそ、セット面はお店の印象を大きく左右します。鏡に映る景色や照明、となりの席との距離感まで、お客様は座っている間ずっと感じ取っているからです。一方で、美容師にとっては毎日の仕事場です。見た目だけで決めてしまうと、動きにくさや配線のトラブルにつながることもあります。
また、セット面の印象は、セット面そのものだけでは決まりません。まわりのカットスペースの壁や光、動線まで含めて考える必要があります。
この記事では、200店舗以上の開業に関わってきた経験から、美容室のセット面の4つのタイプと選び方、鏡・照明・動線で失敗しないためのポイントをご紹介します。

株式会社Lovation
山田 真吾(やまだ しんご)
店舗デザイナー
資格 : 照明士 / 商業施設士 / 色彩検定/マーケティング検定
美容室・飲食店・カフェを中心に、200店舗以上の開業に関わってきました。物販やフィットネスなども含め、地域は北海道から沖縄まで。図面を描く前に「このお店は、誰に、なぜ選ばれるのか」をオーナーと一緒に考え、「多くの人から愛され、永く続くお店づくり」をサポートしています。
おしゃれなセット面のデザイン事例

美容室のセット面をおしゃれにデザインするには、情報収集が必要です。
世の中には、さまざまなデザインのセット面があります。できるだけ多くのデザインを収集しましょう。情報を集めることで理想のセット面のイメージを強化します。とともに、こだわりや世界観をどのように表現すればよいのかが分かります。
情報収集は、身近にある美容室から始めるといいです。インターネットを使えば、日本国内だけでなく海外の美容室からもアイデアを集めることもできます。いろいろなセット面のデザインを見ていくうちに、頭の中に描いていたイメージが具体的に固まっていくでしょう。
お店の設計やデザインをお願いするときに伝えやすいように情報は2種類に分けてまとめます。
- デザインのイメージが近い分類
- 機能面の希望に近い分類
この2つに分けて情報収集した内容を内容をまとめる理由がいろいろあります。その中でも特に重要な理由は『デザイン設計専門家とは言え、あなたの考えやイメージを汲みとってデザインできない人がいる』からです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください:Lovationなら理想の美容室づくりが叶う7つの理由
セット面のタイプの選び方

| タイプ | 向いているお店 | よいところ | 気をつけるところ |
|---|---|---|---|
| 対面式 | 席数が多いお店/店内の中央を見せ場にしたいお店 | デザインの自由度が高い | 床下の配線で工事費が上がりやすく、天井も低くなる |
| 片面式 | 小さめのお店/ひとりで営むお店 | 配線が簡単で、空間を効率よく使える | 店内が見えすぎると、間延びした印象になる |
| 半個室型 | 落ち着いた雰囲気を大切にしたいお店 | となりのお客様が気になりにくい | 空調・照明・スタッフの動きの計画が必要 |
| 個室型 | 客単価の高いお店/プライベート感を大切にしたいお店 | 特別な時間を感じてもらいやすい | 席数が減るため、価格設定とあわせて考える |
美容室で設置されているセット面には、大きく分けて
- 対面式
- 片面式
- 半個室型
- 個室型
の4種類があります。
セット面を選ぶ際、「おしゃれさ」に気持ちがいってしまうかもしれません。けれども、それと同時に大切なのは、“機能性”です。セット面を選ぶ時は、
- 見た目のおしゃれさ
- 機能性
の2点から、イメージにマッチするタイプを選ぶようにしましょう。各セット面の特徴について以下にご紹介します。
対面式のセット面
対面式は、店内の中央などに鏡を背中合わせに置くタイプです。デザインの自由度が高い一方で、コンセントの配線を床下に通すため、工事費がかかりやすいのが特徴です。

対面式は、店内の中央や壁のない場所に設置するタイプです。セット面が中心部分にまとまっている王道スタイルです。
おしゃれなデザインにしやすい対面式です。しかし、注意したいのは、動線、コンセントの配線、お客さんの足元への配慮です。スタッフ動線や客動線がそれぞれの席に独立して必要になります。
例えば、セット面で使うコンセントです。
コンセントを設置するための電気配線をセット面下に施工しなければなりません。その為には、床下に電気配線を通す必要があります。その為には床を上げて、床下に配線用の隙間を作らなければなりません。しかし、床上げをすると工事費用が高くなります。それだけでなく天井高を低くすることにもつながります。
また、セット面とセット面の間をお客さんが通る動線の場合も注意が必要です。動線上にドライヤーなど電源コードが客動線の障害にならないよう注意しましょう。
こんなことも…
工事を安く請け負う美容専門の業者が、一般的な対面式のレイアウトを出店者に提案していた事例がありました。デザイン設計のプロとは言えないレベルの提案資料を見せてもらい驚きました。コンセントの問題やお客さんの動線について何も考えられていないデザインでした。
専門業者とはいえ、デザイン設計する人があなたの希望やイメージを汲み取ることに長けており、計画に反映できるとは限りません。
片面式のセット面
片面式は、壁に向かってセット面を並べるタイプです。コンセントを壁側に付けられるので配線の心配が少なく、空間を効率よく使えます。

片面式は、壁に向かってセット面をレイアウトするタイプです。スタッフ動線や客動線は、セット面とセット面の間に位置するので、空間効率が良いといえます。コンセントは壁面側に取り付けることができるので、対面式よりも配線の心配が少ないでしょう。
しかし、鏡どうしの映り込みや、動線部分が空いて見えることで、レイアウトによっては間が抜けたような印象を与えることもあります。
ポイント
セット面とセット面の間に広くスペースができます。そのため、全体を見渡せるほどの見えすぎる店内は『間の抜けた広い空間』に見えてしまいます。
計画的に見せない範囲(視界制限)を考慮してデザインしましょう。
半個室型のセット面
半個室型は、セット面とセット面の間を仕切りで区切るタイプです。となりのお客様が気になりにくい一方で、空調・照明・スタッフの動きを、事前に計画しておく必要があります。

半個室型は、セット面とセット面の間にパーテーション(間仕切り)があるスタイルです。パーテーションで区切るレイアウトなので、個室のような印象を与えられます。
半個室型の場合、おしゃれさと機能性を両立させるには、
- エアコンの効率
- 照明計画
- スタッフ間のオペレーション
- コスト
- 面積
といった内容を改善するための検証と、事前の計画が必要です。
個室型のセット面
個室型は、セット面を1席ずつ個室にするタイプです。「自分だけの時間」を感じてもらいやすい反面、同じ広さで置ける席数が減るため、価格設定とあわせて考える必要があります。

個室型は半個室型とほとんど同じです。ですが、お客さんはより「自分だけ」という特別感を感じやすいスタイルです。他のタイプよりも面積に対する席数も少なくなるため、料金単価を高く設定する必要があります。
セット面のミラーは内装工事で製作しよう

美容室向けのミラーには、ドレッサータイプと、鏡と板が別々になっているタイプとがあります。どちらのタイプも市販されています。一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
セット面のミラーを選択する方法には、
- 既製品を選ぶ
- 内装工事で製作する
の2種類があります。
それぞれの特徴について見てみましょう。
既製品を選ぶ

すでに出来上がっているものから自分のイメージに近いものを選ぶため、自分で一からデザインするよりも早く設置できるという利点があります。また、オリジナルでミラーを設置するよりも、コストは低めです。
既製品は他のお店で使われている可能性があることと、製品によっては安っぽい印象を与えるおそれがある点は、デメリットといえるでしょう。
内装工事で製作する

ミラーはお客さんの印象に残りやすく、お店のブランディングに影響を与えます。他店にはないオリジナルなミラーを設置することで、差別化しやすくなるでしょう。
オリジナルミラーを設置したい場合は、内装工事で製作する場合がほとんどです。デメリットといえば、既製品よりも高額になるという点でしょう。こだわりが強ければ、その分コストがかさみます。
このように、既製品もオリジナルのミラーを製作する場合も、それぞれメリットとデメリットがあります。しかし、おしゃれさと機能性を兼ね備えた理想のセット面は、
- ケース・バイ・ケースに柔軟に対応できる
- ブランディングにつながる
という点において、内装工事で製作することをおすすめします。コストの問題が解決されるのであれば、検討するとよいでしょう。
セット面の印象を決める5つの要素
お客さんに「おしゃれなセット面だな」と思ってもらうには、セット面以外の要素にも配慮する必要があります。それは、セット&カットスペースのデザインに配慮することです。
セット面を引き立てるセット&カットスペースのデザインをおしゃれにする要素は、以下の5つです。
- セット面の壁面の素材感や色味
- セット面の光環境
- セット面の快適性
- セット面の鏡の映り込み
- セット面周辺の作業性(収納、コンセント位置、ワゴンの位置)
どの要素も、「コンセプトにマッチしている」ということが前提となりますが、それに加えて選ぶ際の留意点があります。要素別に見てみましょう。
①セット面の壁面の素材感や色味
美容室で用いられる壁面の素材には
- 塗装
- 壁紙
- タイル
- 左官仕上げ(職人によって仕上げられる壁)
などがあります。
コストやお手入れの容易さを考えた場合、この中で一番使いやすいのが壁紙でしょう。クロス材を使った壁紙はバラエティに富んでいて、イメージに合ったものを手頃な価格で見つけやすい点が魅力です。ただし、素材感や色味によってはチープな印象を与えがちな点には注意しましょう。
こだわりを求めるのなら、陶磁器のタイルを貼ったり、漆喰、モルタルといった素材を用いて左官仕上げにしたりするのが得策です。その際は、コストやメンテナンスなどの点に留意します。
セット面の壁の色味については、基本的に淡い色味をメイン色として選び、色味が強いものはアクセントに使うと失敗しにくいでしょう。
②セット面の光環境
美容室のセット面の光環境は、使用する照明に左右されます。
セット面の理想的な光環境をつくるには、
- コンセプトを表現している
- お店のイメージを損なわない
- カラーリングの色合いなど仕上がりを正確に確認できる
といった点に留意することが大切です。
美容室は、店内を100ルクス以上の明るさに保つ必要があります。けれども、おしゃれ感と機能性を考えると、最低でも1,000ルクス程度の明るさがほしいところです。
照度を考えたら、次は照明機器を選びます。
- ダウンライト
- スポットライト
- シーリングライト
など、美容室のセット面向けの照明機器は豊富にあります。しかし、機能面を考えるとともに、セット面のデザインに溶けこむものかどうかについて確認することがポイントとなるでしょう。
③セット面の快適性
セット面の快適さは、
- お客さんが快適に過ごせるか
- スタッフが快適に動けるか
の2点を考える必要があります。
お客さんが快適に過ごすための留意点:
- 椅子:長時間座っても疲れないか
- 照明:照明が目に直接当たらないか
- セット面どうしの距離:閉塞感を感じないよう適度な間隔があるか
スタッフが快適に動くための留意点:
- 椅子:椅子どうしは適度に離れているか
- 照明:作業するのにちょうどいい明るさか
- セット面どうしの距離:作業中に他のスタッフとぶつからない程度の距離感を確保できるか
一つでも不便な点があっても、それはお客さんとスタッフが大きな不快感を抱く原因になります。セット面の快適さについては、細部まで徹底して慎重に検討することが大切です。
④セット面の鏡の映り込み
セット面の鏡は、担当スタッフとお客さんの2人が映り込むように設置することが大前提です。鏡に他の人が映り込むと、お客さんはそれだけで気が散ってしまいます。中には不快感を示す人が出てくるかもしれません。スタッフにしても、ちらちらと他の人が鏡に映り込むと、作業に集中することが難しくなるでしょう。
セット面の鏡の映り込みを避けるには、完全個室にすることです。それが難しい場合は、半個室にして仕切りをセット面にするという方法もあります。
⑤セット面周辺の作業性(収納、コンセント位置、ワゴンの位置)
セット面周辺の作業性は、おしゃれなデザインと機能性の両立に欠かせない要素です。
収納などの配置の仕方によっては、セット面のデザインを引き立てることもダサくすることもできてしまいます。また、コンセントの配線を無視したデザインにしてしまうと、作業に不便さを感じてしまうかもしれません。つまり、セット面周辺の作業性も、デザインの一つとして考える必要があるということです。
カラー剤などお客さんの目になるべく触れさせたくないものは、受付カウンターの足元に収納棚を作るなど工夫しましょう。クリアラックなどを使って収納棚をインテリアの一部にするという方法もあります。作業によく使うアイテムをストックしておくワゴンは、セット面全体のデザインに合ったものを選ぶとともに、椅子の近くに置いても、スタッフやお客さんの動きを邪魔しない大きさであるかどうかも確認しましょう。
コンセントの位置は、使いやすさや快適さを考えると、セット面に直接ついているものや、セット面を設置する壁側に配置するのが無難です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください:Lovationなら理想の美容室づくりが叶う7つの理由
美容室のセット面について、よくある質問
Qセット面は何席あればいいですか?
A働くスタッフの人数と、1日に担当するお客様の数から考えます。一人で営むお店なら、2席が目安です。最初から席を増やしすぎず、あとから増やせる状態にしておく方法もあります。Lovationが手がけた8.4坪の美容室では、まず1席で開業し、様子を見ながら2席に増やせるように設計しました。
Qセット面どうしの間隔は、どれくらい必要ですか?
A椅子の後ろに、スタッフが動ける通路を取ることが大切です。目安は、椅子の背から110cm以上です。となりのセット面とは、椅子の中心から中心まで140cm以上あると、お客様もスタッフも窮屈さを感じにくくなります。
Qセット面の鏡は、既製品と造作のどちらがいいですか?
Aセット面は、お客様がいちばん長く過ごし、鏡ごしにお店を見る場所です。お店の印象を大きく左右するので、予算をかける価値がある場所だと考えています。一方で、バックヤードなどお客様の目に入らない場所は既製品を使うなど、メリハリをつけて予算を配分するのがおすすめです。
Qセット面の照明は、どれくらいの明るさが必要ですか?
A仕上がりの確認や作業のしやすさを考えると、最低でも1,000ルクス程度の明るさがほしいところです。あわせて、色の見え方(演色性)も大切です。演色性の高い照明を選ぶと、髪色を正しく確認できます。Lovationでは、演色性Ra90以上を目安にしています。
Q鏡に、ほかのお客様が映らないようにするには?
A鏡に映るのは、担当スタッフとお客様の2人だけにするのが理想です。半個室にして仕切りを設けるほか、鏡の向きや、となりのセット面との位置関係を、図面の段階でずらしておく方法もあります。
まとめ
美容室のセット面のデザイン方法についてご紹介しました。
セット面をデザインするには、
- セット面の種類
- 使用するミラー(既製品またはオリジナル製作)
- セット&カットスペース
といった点に考慮することが大切です。
美容室のセット面は、見た目だけでなく、機能性もあわせてデザインすることが大切です。それが、お客様に居心地の良さと、満足のいく時間を届けることにつながります。
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